京の食を編む 小暑
京の食を編む 小暑
京の食を編む 小暑

京の食を編む小暑

First Dish鱧、いろいろ

鱧、いろいろ

梅雨の最中、ときおり日差しが濃い影を落とすようになると、京都は夏を告げるお囃子の音に包まれます。四季折々の美しさで多くの人を魅了しているこの街ですが、とりわけ夏は食の魅力が多彩です。「梅雨の水を飲んで育つ」と言われる鱧(はも)は、そのシンボルともいえる食材。京の台所「錦市場」で100年以上の歴史を誇る鮮魚店「丸弥太(まるやた)」さんに「THE HIRAMATSU 京都」の料理人たちとお邪魔しました。

美味しい鱧は小顔でべっぴん

創業者の西川 弥太郎さんから数えて4代目にあたる西川 朋宏さん。「夏の鱧は脂よりも旨味が濃く、シンプルであっさとりした料理で活きますね」と話します。

「うちはこの場所でずっと、京料理に合う魚や魚介を専門に扱って来ました。夏が近づくと京都は鱧一色になります。今のように流通技術が整ってなかった昔は、生命力の強い鱧は貴重な栄養源でした。この時期の鱧は産卵前で旨味が抜けておらず、素材の魅力を活かすお椀などにぴったりです。冬に備えて食欲が旺盛になる秋の鱧も脂がのって美味しいですが、やっぱり暑い夏に食べると精がつく気がしますよね。美味しい鱧は身がでっぷりとしているので、顔が小さく見えるんです。鋭い歯で険しい顔をしていますが、なかなかべっぴんさんでしょ(笑)」

美味しい鱧は小顔でべっぴん
美味しい鱧は小顔でべっぴん
美味しい鱧は小顔でべっぴん
美味しい鱧は小顔でべっぴん
美味しい鱧は小顔でべっぴん
夕暮れ時の街に映える山鉾。
久しぶりの祇園祭に、街も人も浮き足立つ。
獰猛な顔とは裏腹に、身はさっぱり。
良い鱧は身が太いので顔が小さく見える。
「山鉾が出ると、日常が帰ってきた気分」

素材の良さを引き立てる
一期一会の料理

京都の夏の風物詩といえる鱧。「割烹 いずみ」とイタリア料理の「リストランテ ラ・ルーチェ」 ではどのような料理に仕立てるのでしょうか。

「旬の鱧に走りの冬瓜を合わせて、日本料理らしい技で素材の味を活かしたい」とは、いずみの料理長、若松 裕樹。夏の疲れをやさしく癒す一品に期待が高まります。一方、ラ・ルーチェの料理長、筒井 崇海は「大阪時代には天神祭で鱧を出していたので、関西の夏を感じる一皿をつくりたい」と、活きの良い食材に目を輝かせていました。夏にぴったりの趣向を凝らした、それぞれの一品をご紹介します。

丸弥太大将 錦市場にて

丸弥太大将 錦市場にて

丸弥太大将 錦市場にて

丸弥太大将 錦市場にて

丸弥太大将 錦市場にて

上から「良い素材は店の奥にある」と西川さん。/職人の見事な包丁さばきに見惚れる/伊藤若冲を生んだ京の台所は400年の賑わい。/鱧とあわせる食材について相談する顔も真剣。

静かな板場に鱧の骨を切る音が心地よい。静かな板場に鱧の骨を切る音が心地よい。
素材の鮮やかな色が映える日本料理らしい椀。素材の鮮やかな色が映える日本料理らしい椀。
純白の身がまるで雪のように涼しげで美しい。純白の身がまるで雪のように涼しげで美しい。
一服の絵画のような庭を望む檜のカウンター。一服の絵画のような庭を望む檜のカウンター。
  • 静かな板場に鱧の骨を切る音が心地よい。
  • 素材の鮮やかな色が映える日本料理らしい椀。
  • 純白の身がまるで雪のように涼しげで美しい。
  • 一服の絵画のような庭を望む檜のカウンター。

鱧と冬瓜のお椀by 割烹 いずみ

ザリッ、ザリッ、と小気味の良いリズムを刻むのは鱧の骨切り。鰹と昆布からしっかり出汁をとったいずみの椀は、星空のような漆黒の器に鱧の純白と梅肉の赤が鮮やかです。綺麗に炊いた冬瓜とジュンサイの青さがみずみずしく映えます。若松は「素材を活かすためには、基本に忠実に技を積み重ねることが大切」といいます。身近な食材を使いながら奇をてらうことなく、師匠や先輩から受け継いだ伝統をより深く掘り下げて表現するいずみの料理。今回の一品について「お仕事でもご旅行でも、この季節の移動はしんどいもの。ホテルの割烹としては疲れの癒えるお食事を提供したい」と、若松。凜とした和の空間で頂く一杯の椀が、疲れたからだに染み入ります。このもてなしと心配りこそ、日本料理の本質といえそうです。

海の幸と山の恵みが滋養を与えてくれる。海の幸と山の恵みが滋養を与えてくれる。
和の技法と洋の伝統が融合した一皿。和の技法と洋の伝統が融合した一皿。
ニンニクと魚介の組み合わせが食欲をそそる。ニンニクと魚介の組み合わせが食欲をそそる。
「フリットやグリルなど、鱧料理は奥が深い」「フリットやグリルなど、鱧料理は奥が深い」
  • 海の幸と山の恵みが滋養を与えてくれる。
  • 和の技法と洋の伝統が融合した一皿。
  • ニンニクと魚介の組み合わせが食欲をそそる。
  • 「フリットやグリルなど、鱧料理は奥が深い」

鱧の落とし アクアパッツァ風By リストランテ ラ・ルーチェ

グリルした魚と魚介を入れて煮込むアクアパッツァ。南イタリアの漁師料理を進化させた鱧の一皿は、オリーブオイルとニンニクの香りが食欲をそそります。アサリの一番出汁を使ったボンゴレ・ビアンコをベースに、アクセントを添えるのはオリーブとドライトマト。くり抜いた賀茂ナスのうえに添えた鱧は、「初代いずみの料理長だった小泉さんから昔教わった『落とし』です。和食の伝統的な技法とイタリアのスープ料理をあわせて、暑くても食欲の湧く一皿に仕立てました」と、筒井はインスピレーションについて話します。ケッパーの代わりに添えた梅干しは自家製のもので、切れ味の良い塩味と爽やかな酸味が印象的。丸弥太さんの丁寧な仕事と、和の調理法を合わせたイタリア料理は、まさにここでしか食べられないラ・ルーチェらしい夏の一皿に仕上がりました。

  • ひとさらの文脈
  • ひとさらの文脈
  • ひとさらの文脈
  • ひとさらの文脈
  • ひとさらの文脈
  • ひとさらの文脈

ひとさらの文脈

京都は、祇園祭の熱気に沸き立っていました。食材の源流としてひらまつの料理人たちと西川代表にお話を伺えたのは貴重な体験でした。活気ある店内を奥へ進むと、坪庭を挟んだ母屋の二階に小振りな座敷があり、脈々と続く京都の日常を垣間見た気がします。

やさしい椀に仕立てた「いずみ」と、アクアパッツァに和の伝統技法を融合させた「ラ・ルーチェ」の料理は、それぞれ「THE HIRAMATSU 京都」らしいアイデアに満ちていました。春に生まれ、梅雨の水で育ち、生命力に満ちた鱧をいただく喜び。「鱧も一期 蝦(えび)も一期」といいますが、できることなら旬を味わう人生でありたいものです。

この季節にしか出会えない、一期一会の一皿と京都の夏をお楽しみください。

読むひらまつ。編集部 飯田健太郎

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〜京の食を編む〜

その土地の生産者と交わり、風土を理解し、食材に向き合うことで一皿の魅力を最大限に引き出すひらまつの料理人たち。なかでも京都は多彩な料理人の腕を堪能できる場所です。

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