蒼と碧の育むもの
蒼と碧の育むもの

あらまほしき琉球の営み

First Dish蒼と碧の育むもの

蒼と碧の育むもの

沖縄本島の東側、山原(やんばる)の緑が茂る宜野座(ぎのざ)エリアは、琉球の歴史と風土を色濃く残す場所。空の蒼と海の碧のあわいから朝日が昇り、豊かな農作物と海の恵みを育んできました。手つかずの大自然と穏やかな琉球の営みを舞台にした「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座」では、フランスや東京など、各地のひらまつで研鑽を積んだ木下 喜信シェフによるフランス料理が自慢です。オーセンティックでありながら、どこか自由な雰囲気を感じさせる食の物語。一皿に込めた想いを聞いていると、沖縄の大自然が育んだのは豊かな食材だけではないように感じます。

フランス料理に出会った少年

木下は「小学生の頃から自分で料理を作ることが楽しかった」といいます。高校卒業後、地元福岡県の料理学校へ進学。「漠然と和食の道に進もうと思って進学したのですが、学校でフランス料理に出会い、すべてがはじまりました」と、当時を振り返ります。

「卒業後、一年ほど小さなレストランで働いていたのですが、縁あって『レストランひらまつ 博多』を紹介されました。面接としていきなり15人くらいの料理人が働くキッチンに通されたのですが、二人きりで切り盛りする小さな厨房での経験しかなかった私にはなにもできなかった。 “これが本当のフランス料理の世界か”と落ち込んでいたら、シェフに『明日から店に来てくれ』といわれて働くことになりました。3年目となった2001年、当時のパリ店がミシュランの一つ星の評価を得たと聞き、いてもたってもいられず配属の希望を出しました。給料のほとんどを食事に使い、休日はTGVでリヨンなど美食の街へ足を伸ばして名店を訪ね歩きました。当時の日本のフランス料理はコースがメインでしたが、現地ではアラカルトに対応するため『ア・ラ・ミニュット(a la minute/すべてオーダーが入ってから料理すること)』で調理していました。戦場のような厨房で必死に働きながら、ソースを味見して、仕事帰りや休日には仲間と一緒に食事をする。あの味と思い出は、いまも忘れられないですね」

フランス料理に出会った少年
フランス料理に出会った少年
フランス料理に出会った少年
フランス料理に出会った少年
ときおり笑顔を覗かせながら、終始穏やかに話す木下。
リラックスした雰囲気と上質な空間が心地よい。
豊かな自然と静かな環境は何よりも贅沢。
鮮やかなブルーのグラデーションにやんばるの緑が映える。

ポール・ボキューズで知った
クラシックの魅力

2年弱のフランス滞在から帰国した木下は、当時広尾にあった本店や、西麻布の「キャーヴ・ド・ひらまつ」などで研鑽を重ねます。

「『キャーヴ・ド・ひらまつ』で初めて料理長を担当したのですが、28歳の自信は見事に打ち砕かれました。自分の限界を超えてしまって、思い出したくないほどしんどい時期でした。自分の仕事を見直すために、もう一度本店に戻してもらったのは大きな救いだったと思います。その後、『ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座』の立ち上げで再び料理長として参加するのですが、ここでやっと“自分の味”を見つけることができたんです。クラシックなフランス料理というか、ボキューズのオーセンティックな世界観が合っていたのだと思います。仕事も順調で結婚して子供も生まれ、家を買った矢先に、総料理長として『THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座』への辞令が出ました(笑)。料理教室など新しい取り組みも始めていたので、まずは3ヵ月だけ単身赴任して、自信を付けた“東京のフランス料理”をそのまま沖縄でも楽しんでもらおうと思ったのですが、これが大きな勘違いでした。お客様から“これならわざわざ宜野座まで食べに来なくてもいい”と言わせてしまい、自分で自分の真似をしてしまっていることに気付かされました。これは本腰を入れてこの場所でやるべき自分の仕事に向き合わないと駄目になると思いました」

樹木と海のコントラストはどこか神聖な雰囲気を感じさせる。

開放的な空間でいただく食事はリゾートのハイライト。

鮮やかな食材を慈しむように丁寧に仕込む木下。

時間と共に表情を変える風景に息をのむ。

上から樹木と海のコントラストはどこか神聖な雰囲気を感じさせる。/開放的な空間でいただく食事はリゾートのハイライト。/鮮やかな食材を慈しむように丁寧に仕込む木下。/時間と共に表情を変える風景に息をのむ。

宜野座で初めて
“料理人”になれた

いわば“ボキューズ流”の料理を沖縄でも再現しようとした自分と、沖縄でしかできない体験を求めるゲスト。その土地の文化や風土を理解しなければ、本当の意味でテロワールを表現することはできないと痛感した木下は、本格的に拠点を沖縄へ移します。この場所で提供するのにふさわしい料理を探し求めていたある日、転機が訪れます。

「『良い素材、良い火加減、良い味付け』というボキューズの基本は押さえながらも、宜野座という土地と呼吸を合わせなければいけないと考えていました。そんななか、名護市の朝市で地元のユニークな生産者との出会いがあり、それが大きなターニングポイントになりました。料理に使いたくなる個性的な野菜を育てていて、ほかにも素晴らしい生産者の方々との縁を繋いでくれたのです。そこで人と人の距離感やコミュニティの在り方を痛感したんです。東京時代の自分を振り返ると、生産者の想いや素材の本当の魅力も知らずに、仲買さんに自分の都合だけを押しつけていたことが恥ずかしくなりました。いまではこの土地の素晴らしい食材を活かしたい、自分の培ったものでさらに魅力を引き出し、お客様に届けたいと心から思っています。出汁を使った食文化にも興味が出たので、和食の料理人に出汁の取り方をゼロから教えてもらったり、野菜が元気か気になって農家さんの畑に寄ってきたり。ここに来て、初めて“本当の意味での料理人”になれた気がします」

海に浮かぶ小舟が旅情をあおる。

室内を彩る光の変化が美しい。

「二十日大根のスプラウトを持って来てくれた」と、嬉しそう。

料理と向き合っているときの木下は、この上なく楽しそうだ。

上から海に浮かぶ小舟が旅情をあおる。/室内を彩る光の変化が美しい。/「二十日大根のスプラウトを持って来てくれた」と、嬉しそう。/料理と向き合っているときの木下は、この上なく楽しそうだ。

やちむんの鮮やかなブルーに食材が映える。やちむんの鮮やかなブルーに食材が映える。
この土地の食材がモダンなフランス料理に昇華している。この土地の食材がモダンなフランス料理に昇華している。
「美味しいものは、不思議と栄養バランスが良いんです」「美味しいものは、不思議と栄養バランスが良いんです」
  • やちむんの鮮やかなブルーに食材が映える。
  • 蓋この土地の食材がモダンなフランス料理に昇華している。
  • 「美味しいものは、不思議と栄養バランスが良いんです」

「美ら海マグロのグリエ」と
「もとぶ牛のロースト」

この場所で料理人として成長させてもらった木下は、この場所で育った食材に特別な想いを込めて料理します。目の覚めるようなブルーのやちむん(焼物)のお皿に盛られた「美ら海マグロのグリエ」は、赤身にマイクロリーフをあわせたもの。フランボワーズビネガーの酸味がビーツのほのかな甘みを引き立てます。「沖縄は季節ごとに旬のマグロが食べられるとてもめずらしい場所です。冬のマグロは赤身の脂がさっぱりしていて酸味がよく合い、食欲をそそります。これは今の時期だけの楽しみですね」と、木下。軽くあぶった香ばしい香りをアクセントに、トラウトキャビアと海ぶどうの食感がプチプチと楽しい一皿です。

「もとぶ牛のロースト」は、希少なヒレを絶妙な火入れでいただく一皿。水分の含有量が完璧にコントロールされた赤身からは、噛むほどにうま味が溢れます。ソース・ペリグーの複雑な風味とトリュフの香りが味わいに奥行き与え、付け合わせの島豆腐がオーソドックスなグリル料理に重層的な魅力を加えていました。木下は「地元の食材をフランス料理として組み立てたり、王道の食材と沖縄の伝統料理を組み合わせたり、ともかく自分が食べて美味しいものを出しています!」と嬉しそうに話します。オーセンティックなフランス料理と沖縄で育った食材の組み合わせは、まさにこの場所でしか食べることのできない一皿へと昇華されていました。

  • ひとさらの文脈

ひとさらの文脈

今回初めて訪れた沖縄県本島の宜野座。やんばる(山原)と呼ばれる山岳地帯は静かで、心地よい風に包まれていました。この場所で自らの料理と向き合う木下シェフの言葉は、食材と生産者に対する感謝の気持ちに満ちていました。彼を知る古くからの同僚によれば、「まるで別の料理人」と感じるほどその佇まいは穏やか。その思いは、2022年に東京の古巣「レストランひらまつ レゼルヴ」で開催された「宜野座ディナー」へと実を結びます。もとぶ牛の美味しさに感動したゲストが牧場に手紙を送ったというエピソードが印象的でした。

一年を通して快適な沖縄ではあまり旬を感じないと思っていましたが、木下シェフの料理には冬にしか味わうことのできない魅力がたくさん詰まっていました。決して平坦ではないものの、独特な間のようなタイミングに恵まれた料理人としての道のりは、穏やかなこの土地にたどり着き、その魅力はゆっくりと、鮮やかに開花したようです。彼の料理は自分の言葉で語る物語のようなもの。料理人としての人生で培ってきた料理観が凝縮されていました。食材の旬と料理人の旬を共に味わう。それは、最高の食体験といえるかもしれません。

読むひらまつ。編集部 飯田健太郎

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