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MAGAZINE #62019.10.01

山と海の出会う場所としての熱海

Atami, Where the mountains meet the sea

熱海といえば温泉が筆頭に挙げられますが、それだけでなく熱海が今なお人々を惹きつけている理由の一つが、この熱海を起点とするエリアが相模湾に面し、豊富な海の幸に恵まれていることでもあります。
「相模湾の豊かな海の幸を得られることで、“滞在するレストラン”のクオリティが約束されるといっても過言ではありません」。
自身も釣りを趣味とし、魚への並々ならぬ見識を持つシェフ三浦賢也はそう語ります。旬の魚を求めて、時には伊東漁港まで出向き自らの目で確かめつつ旬を見極めるといいます。

時には漁船に同乗し漁場の様子を見るほどに魚介類への愛情の深さを持っています。
「実際に自分の目で確かめ素材と向き合うことで、新しい料理へのアイデアが生まれたり、素材の活かし方を考えるというのが、まさにひらまつ流の料理へのアプローチだと思います」。
伊東漁港の朝市のセリへと向かうシェフ三浦の日常は、そのこと自体、料理への第一歩だと言えるでしょう。

伊豆の恵みを探して

眼前の相模湾と同様に、熱海を形作るもう一つの要素は、背後に迫る箱根へと連なる山地です。熱海は平地が極めて少なく、山の方へと発達せざるを得ない地形的特徴を持っています。ちなみに海岸もハワイのワイキキ同様人工的に整備されています。

この地形の特徴を考えると、山地の先には伊豆高原が広がり、豊かな山の幸が控えていることになります。
「確かに伊豆高原の魅力は新鮮な野菜類に加えて、軍鶏などの養鶏もしっかりとした生産者がいることも魅力です」。
そのシェフ三浦の言葉通り、シェフ自身が生産者を訪れ、確かめ、そこから新しい料理の着想を得ると言います。

堀江養鶏3代目の堀江利彰さんが抱える元気な軍鶏

「天城軍鶏は十分な広さを持ってのびのびと育てられた軍鶏だけに、肉質といい歯ごたえといい、最高のものを提供してくれます」。
幻の鳥とさえ言われた天城軍鶏は、通常のブロイラーの約4倍の日数、120日ほどもかけてゆっくりと育てられます。その上、飼育面積も通常の4倍もあり、十分な運動量でしっかりと美味しい肉質へと育てられています。
「実際にここへ来て、軍鶏たちが元気に育っていることを確認できるということは、料理人にとって自分の料理をどう完成させるかを考える上で必要なことです」。
このシェフ三浦の言葉を待つまでもなく、生産者とじっくり話し合い、選び、そこから料理のヒントをえる。そのためにもひらまつのシェフたちは足繁く農場へと向かいます。

棚田100景にも選ばれた「荒原の棚田」にて

「評判を聞いて訪れた“浅田ファーム”さんは、想像以上に無農薬・無化学肥料という新しい取り組みを実践していらっしゃって、この野菜の旨味を最大限に引き出した料理を考えたいですね」。
景勝地にも指定されている“荒原の棚田”を有する浅田ファームは、自然農法を極め里山のあるがままの土地を生かしながら、野菜本来の美味しさを丁寧に育て上げています。
「土本来が持つ力を生かして、余計な化学肥料や農薬などを一切使わず、自然の循環を活かした野菜や米の美味しさは格別です」。
と浅田藤二さんは自信を持ってこの地ならではの作物作りに励んでいる。

山と海。二つの美食の恵みを一つの皿の中での出会いとして昇華させる。熱海というロケーションメリットを最大限に生かした美食の時間もまた、HIRAMATSU ATAMIの大きな魅了です。

Text : マガジン編集部
Photo : Masashi Nagao

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