大自然で美食の理想郷を想う
大自然で美食の理想郷を想う
大自然で美食の理想郷を想う

大自然で美食の理想郷を想う

Second Dish時が育てる森のテロワール

時が育てる森のテロワール

2026年、「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」は開業5周年を迎えます。
豊かな自然に囲まれたこの場所では、季節の移ろいがそのまま大地の実りとなり、料理の発想にも影響を与えてきました。シェフたちはここで過ごした歳月を振り返り、あらためて御代田の風土と向き合いながら新たなシグネチャーメニューに取り組みました。ひと皿の背景に広がる風土の魅力、人々の営み、そして料理人たちの想い。その静かな物語を辿っていきます。

大地から始まるひと皿

シグネチャーメニューの創作に当たって、フランス料理「Le Grand Lys(ル・グラン・リス)」で総料理長を務める柳原 章央シェフと、イタリア料理「La Lumière Claire(ラ・ルミエール・クレール)」で料理長を務める前田 祐介シェフとともに、日頃からお世話になっている生産者のもとを訪れました。

最初に訪ねたのは「ベジガーデン畑楽*きんぺい」の金澤 金平さんの畑です。0.65ヘクタールの区画に約130品目もの野菜が育つ畑は、シェフたちのインスピレーションの源でもあります。柳原シェフとは開業当初からの関係で、日々の料理に欠かせない生産者のひとりです。柳原シェフも「色々とユニークな野菜も育ててくれるので良い刺激になる」と話します。野菜をひとつ手に取り、その日ならではの味や香りを伝えながら、長年積み重ねてきた試行錯誤を淡々と語ってくれる金澤さんにお話を伺いました。

「人と同じものを作るのでは面白くないと思って、珍しい品種も少しずつ育てています。『THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田』のシェフたちは初めて見る野菜でも味見してアイデアを出してくれるので、育てている私としてもやりがいを感じます。以前、前田シェフにうちのトマトで作ったソースを頂いたことがあって、美味しかったですね。こんなに美味しく料理してもらえるなら、一生懸命育てている甲斐があると嬉しく思いました。互いの手仕事が相手に届いているという実感が良い刺激になっていると思っています」

大地から始まるひと皿
大地から始まるひと皿
大地から始まるひと皿
大地から始まるひと皿
大地から始まるひと皿
来年の作付けについて話す三人は、チームとしての一体感を感じる。
日本だけでなくアジアやヨーロッパの品種も積極的に育てる。
東京で技術者として働いていた金澤さんは、13年ほど前から本格的に農業を始めた。
こぼれ種が咲いたディル。季節外れの野菜を見つけて喜ぶシェフたち。
日光を浴びた野菜はどれも瑞々しい。

慈しみながら育てた本来の味

続いて訪れたのは「たんぽぽyou農」の清水 やよいさん。「わたしたち農家は食べてくれる人がいなきゃ成り立たない」と話しながら、畑から抜いた小カブを切ってくれました。ひとくち噛むと甘みが立ち上がり、農薬も化学肥料も使わないため雑味が残りません。肥料から手作りする有機栽培農園で、25年にわたって土作りから徹底してきました。

「この土地で生まれ育って、大自然のなかで生きていきたいと思って農家になりました。最初は一般的なやり方で野菜を育てていたのですが、自分で食べても美味しいと思えなかったのです。それを人に食べさせてはダメだなと思って、有機栽培に切り替えて試行錯誤を重ねてきました。うちでは“ぼかし肥料”を手作りしているのですが、堆肥は近くの山の落ち葉と土着微生物群を生かして作ります。それらを使い土地が持つ健全で活力のある環境を復活させるのです。そうした環境で育った野菜は味が濃い。つまり野菜が本来持っている味の特性を十分発揮させるんですね。例えば春菊やピーマンの本来の味は爽やかな甘みがあり、苦くないのです。でも、完璧な農業者ではありませんね。百姓という仕事は死ぬまで足りないことを埋めていく仕事です。だから、食べてくれた人の“美味しい”という言葉がなにより嬉しいし、励みになります。美味しく料理してくれるシェフたちには感謝しています」

慈しみながら育てた本来の味

慈しみながら育てた本来の味

慈しみながら育てた本来の味

慈しみながら育てた本来の味

慈しみながら育てた本来の味

黒人参やパースニップなど、冬は根菜がしっかり実る。/見事な紅葉に自然の豊かさを感じる。/カブが付いたままの野沢菜を見る貴重な機会。/朝降りた霜が溶けてきらきらと輝く。/「有機農業で私が知っていることなら何でも教えたい」と、清水 やよいさん。

料理人にとっても理想郷

帰り道、柳原シェフは「久しぶりに生産者の方々とゆっくり話ができて良かった」と話します。

「私がこの場所で仕事をするようになって5年が経ちました。家族もすっかり御代田の土地に馴染み、故郷といえる場所になりつつあります。この場所は自然も豊かで暮らすのにも最適ですが、生産者のみなさんと触れあえるこの距離感は料理人にとっても理想的です。幸福度が高くなったように感じられてくるというか、土地の食材や生産者さんと向き合いながら料理をしていると、自分が美味しいと思えるひと皿が自然なかたちで生まれてくる。それが、いまの自分らしいフランス料理なのかなと思うのです。シグネチャーではそんな贅沢や豊かさ、そして、どこかホッとする御代田の素朴さを感じて頂きたいと思っています。」

料理人にとっても理想郷
料理人にとっても理想郷
料理人にとっても理想郷
「御代田に帰ってくると落ち着く」と、表情も穏やかだ。
目の前で素材を摘みながら料理を考えるライブ感がたまらない。
柳原シェフと前田シェフは基本的に同じ厨房で調理する。
優しくほっこりとした印象だが、柚子胡椒の辛みが素材の魅力を引き立てる。優しくほっこりとした印象だが、柚子胡椒の辛みが素材の魅力を引き立てる。
  • 優しくほっこりとした印象だが、柚子胡椒の辛みが素材の魅力を引き立てる。

野菜のひとさらBy ル・グラン・リス

柳原シェフの御代田への愛情が詰まった一品は「野菜のひとさら」です。「大地から頂いたものをひと皿に込めた」と話すように、素材の味を活かした“引き算のフレンチ”は油も使わず軽やかな味わいが印象的。椎茸のデュクセル、湯葉と柚子胡椒のソース、芋餅の優しい甘み。それぞれの味と食感が絡まりながら、初冬の味覚を引き立て合います。「コースの温かい前菜として滞在のひとときを彩るひと皿にしたかった」という素材の使い方は、冷涼な空気と豊かな土壌が育んだ野菜だけが持つ魅力を巧みに引き出しています。蓮根のシャキシャキした食感が心地よく、昆布だしと柚子を加えたエスプーマ(泡)とのコントラストも実に鮮やかです。「食材や調味料の組み合わせだけ聞くと和食みたいですよね」と話しますが、見た目も味も紛う方なきフランス料理。ひとくち食べて、子供でも素直に美味しいと思えるような純粋な味わいが柳原シェフらしいひと皿です。

御代田の大地に育まれる

そして、イタリア料理を担当する前田シェフは柳原シェフと厨房を共にしてきた3年間を「やりたいことが少しずつやれるようになってきた」と振り返ります。

「月並みかもしれませんが、あっという間の3年でした。毎日できる限りのことはやってきたという自信が、少しずつ自分を成長させてくれたように思います。料理の垣根を越えて先輩シェフとして現場を引っ張り、アドバイスをくれた柳原シェフにも感謝しています。最近、この場所は自分に合っていると感じることが増えました。生産者のみなさんをはじめ関係人口も増え、さまざまな出来事がインスピレーションに繋がるようになってきたのです。旬の素材を旬の間に使い切れる贅沢は、料理人冥利に尽きると思います。御代田の大地で育った素材をイタリア郷土の技で料理に仕立てる。こうした学びを活かし、生産者とゲストの架け橋となるひと皿を提供していきたいと思います」

御代田の大地に育まれる
御代田の大地に育まれる
御代田の大地に育まれる
謙虚ながらも自信に満ちた表情の前田シェフ。
生産者の知り合いも増え、インスピレーションの幅も広がった。
収穫した野菜を嬉しそうに運ぶ姿は純粋な子供のようでもある。
ソースの鮮やかなコントラストが美しい。ラビオリにもおやきにも見えるから不思議だ。ソースの鮮やかなコントラストが美しい。ラビオリにもおやきにも見えるから不思議だ。
  • ソースの鮮やかなコントラストが美しい。ラビオリにもおやきにも見えるから不思議だ。

野菜のラビオリBy ラ・ルミエール・クレール

3年前のインタビューでこれからの展望について尋ねたところ「パスタで勝負していきたい」と話していた前田シェフ。5周年の節目で作るひと皿は「野菜のラビオリ」でした。「シグネチャーとして、旬の素材を取り入れつつも、ずっと変わらない“なにか”を探していた」と話します。今回のラビオリに詰めた食材は野沢菜。パンと米麹を漬け込んだ自家製の醤油を隠し味に、リコッタチーズを合わせて手作りのパスタ生地で包みます。「 “野菜のおやき”をシグネチャーにしてみたかった」と話しながら両面を軽く焼くと、ラビオリでありながら「おやき」にも見えてくるから不思議です。しかし、パルメザンチーズのソースと野沢菜のオイルを合わせたその味わいは、前田シェフの技と想いが結実したオリジナリティ溢れるもの。御代田でしか味わうことのできないテロワールを表現しています。

  • ひとさらの文脈

ひとさらの文脈

冬の信州はピリッとした寒さが心地よく、厳しさだけでなく温もりのありがたさを感じさせてくれます。今回シェフたちと一緒に生産者の元を訪れて、それぞれの命に向き合う姿勢とそこから生まれる温かな交流を垣間見る思いがしました。シェフたちはいま、地域連携の一環で中学生の職場体験や学校給食の監修などにも取り組んでいます。「地域の子供たちにとって豊かな大地で育った食材は当たり前ですが、それは本当に貴重なこと。料理になるプロセスを提供することで生産者との架け橋となるような体験になれば」と、シェフたちは話してくれました。「食」というかけがえのない営みを中心に循環する温かな地域の輪。「ミシュランガイドホテルセレクション 2025」の2ミシュランキーという評価は、5周年を迎える「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」の新しい姿を称えてくれているようです。

開業5周年を記念した「ふたりのシェフが織りなす特別ディナーを堪能する宿泊プランはこちら

読むひらまつ。編集部 飯田健太郎

THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田
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〜大自然で美食の理想郷を想う〜

食材だけでなく、その土地に根差した文化や風土も含めてテロワールだと考えるひらまつの料理人たち。
御代田町の丘にそびえる「森のグラン・オーベルジュ」では、生産者をはじめとする人々との交流、道具や器へのこだわりなど、
美食家たちの理想郷を叶えるビハインド・ストーリーをお届けします。

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