Second Dish時が育てる森のテロワール
時が育てる森のテロワール
2026年、「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」は開業5周年を迎えます。
豊かな自然に囲まれたこの場所では、季節の移ろいがそのまま大地の実りとなり、料理の発想にも影響を与えてきました。シェフたちはここで過ごした歳月を振り返り、あらためて御代田の風土と向き合いながら新たなシグネチャーメニューに取り組みました。ひと皿の背景に広がる風土の魅力、人々の営み、そして料理人たちの想い。その静かな物語を辿っていきます。
慈しみながら育てた本来の味
続いて訪れたのは「たんぽぽyou農」の清水 やよいさん。「わたしたち農家は食べてくれる人がいなきゃ成り立たない」と話しながら、畑から抜いた小カブを切ってくれました。ひとくち噛むと甘みが立ち上がり、農薬も化学肥料も使わないため雑味が残りません。肥料から手作りする有機栽培農園で、25年にわたって土作りから徹底してきました。
「この土地で生まれ育って、大自然のなかで生きていきたいと思って農家になりました。最初は一般的なやり方で野菜を育てていたのですが、自分で食べても美味しいと思えなかったのです。それを人に食べさせてはダメだなと思って、有機栽培に切り替えて試行錯誤を重ねてきました。うちでは“ぼかし肥料”を手作りしているのですが、堆肥は近くの山の落ち葉と土着微生物群を生かして作ります。それらを使い土地が持つ健全で活力のある環境を復活させるのです。そうした環境で育った野菜は味が濃い。つまり野菜が本来持っている味の特性を十分発揮させるんですね。例えば春菊やピーマンの本来の味は爽やかな甘みがあり、苦くないのです。でも、完璧な農業者ではありませんね。百姓という仕事は死ぬまで足りないことを埋めていく仕事です。だから、食べてくれた人の“美味しい”という言葉がなにより嬉しいし、励みになります。美味しく料理してくれるシェフたちには感謝しています」





黒人参やパースニップなど、冬は根菜がしっかり実る。/見事な紅葉に自然の豊かさを感じる。/カブが付いたままの野沢菜を見る貴重な機会。/朝降りた霜が溶けてきらきらと輝く。/「有機農業で私が知っていることなら何でも教えたい」と、清水 やよいさん。
ひとさらの文脈
冬の信州はピリッとした寒さが心地よく、厳しさだけでなく温もりのありがたさを感じさせてくれます。今回シェフたちと一緒に生産者の元を訪れて、それぞれの命に向き合う姿勢とそこから生まれる温かな交流を垣間見る思いがしました。シェフたちはいま、地域連携の一環で中学生の職場体験や学校給食の監修などにも取り組んでいます。「地域の子供たちにとって豊かな大地で育った食材は当たり前ですが、それは本当に貴重なこと。料理になるプロセスを提供することで生産者との架け橋となるような体験になれば」と、シェフたちは話してくれました。「食」というかけがえのない営みを中心に循環する温かな地域の輪。「ミシュランガイドホテルセレクション 2025」の2ミシュランキーという評価は、5周年を迎える「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」の新しい姿を称えてくれているようです。
開業5周年を記念した「ふたりのシェフが織りなす特別ディナーを堪能する宿泊プランはこちら。
読むひらまつ。編集部 飯田健太郎








優しくほっこりとした印象だが、柚子胡椒の辛みが素材の魅力を引き立てる。


ソースの鮮やかなコントラストが美しい。ラビオリにもおやきにも見えるから不思議だ。